何もかも繊細だった。

　肌は雪のように白くて、髪は烏のように真っ黒。
　同じように真っ黒なけっこう長いまつげをしていて、闇色の瞳がとてもきれいだった。

　眼鏡を押し上げる仕草も様になっていて、細いきれいな手が見えた。
　しもやけやあがぎれだらけのあたしの手とは全然違っていた。

　それが男の子で、あたしとひとつしか歳が違わなくて、頭もいいだなんて神様は不公平だなんて思った。

　そして、そのきれいな人は今もあたしのそばにいてくれる。

「……まったく、君は……」
　そこまで言うと、ネスは呆れた顔をしてに眼鏡を指で押し上げた。
「男はきれいだなんて言われてももうれしくないぞ」
　そんなことを言っているけど、ネスの顔は照れているみたいで微かに赤い。
「でも、ほんとうにきれいだっておもったんだもん」
　見上げるネスの顔は、今もきれいだって思う。
　繊細だという印象はかわらないまま、背が伸びて肩も広くなって……かっこよくなって大人の男の人になってしまった。
　いつまでもこどもっぱいと言われるあたしとは正反対。

「でも、あの時ネスはなんだか恐い顔していたよね」
「緊張していたんだ」
　ネスはどこか困ったようなあいまいな顔で笑った。
「クレスメントの末裔が見つかって連れてこられたと聞いて、緊張しないでいられるか。もっとも……」
　ネスは言葉を止めて、あたしの髪に触る。
「それが、君みたいな小さな女の子だとは思わなかったけど」

「ネスは初めから知っていたの？」
　そんなこと、初めて聞いた。
「義父さんが君に会わせる前に話してくれた。だけど……それよりも僕の中の記憶が覚えていた。君は小さかったけど、確かにクレスメントの魔力が感じられたから……」
　そういって、ネスは薄く笑った。その顔はうれしいというより寂しそうだったから、あたしはそっとネスの手に自分の手を重ねた。

「ねえ、ネス。」
　まだ何かあるのかと言いたげなネスの視線に、あたしは微笑みを返す。あなたが不安にならないように。
「あたしね、ネスと初めて会ったとき、懐かしいなって思ったの。……うまく言えないけど、離れていた友達と久しぶり逢えたようなそんな感じがしたの。
　ネスみたいに記憶は残ってなかったけど、あたしの中の何かはきっと、ライルのことを覚えていたんだよ」
　ネスはちょっと驚いたように瞬きをして、こんどこそ本当の笑顔を見せてくれた。

「……ありがとう」
　あたしのほうがありがとうと言いたくなるようなきれいな笑顔で、あたしは本当に幸せだなって思った。









まとまりがないです。
たぶん好感度大ED後でしょう（無責任）。
美人度で言えばネスティのほうが上、トリスは美人というより可愛い系だと思います。
ネス視点の話はオフ本で書いているので、今回はトリス視点ということで…